威馬汽車知的財産権非侵害確認紛争案

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[ 2024-06-21 ]

一審事件番号:(2020)川 01 民初 1474 号 

二審事件番号:(2021)最高法知民終 2460 号 

裁判要旨 

 

知的財産権非侵害確認紛争においては、被告は原告に権利侵害警告をしたまたは原告の権利侵害について 訴えたこと、原告が被告に訴権行使の催告及び催告時間、送達時間を伝えたこと、および被告は合理的な期 限内に訴訟を提起しなかったことを原告から証明すべきである。被告が前事件で訴訟を提起したあとそれを 取り下げた行為は、被疑侵害行為が合法か違法かという法律上の論争を解消することはできないため、この 行為は被告が原告に侵害警告をしたと見なすべきである。原告は非侵害確認の訴訟において催告の範囲外の 権利非侵害主張を提出しても、催告の有効性に影響しない。「合理的な期限」は知的財産権の権利類型及び性 質、事件の具体的な状況に基づいて、権利侵害行為の証拠を発見する難易度と訴訟準備に必要な合理的な時 間などの要素を十分に考慮して確定すべきである。 

 

事件の概要 

 

上訴人(原審原告):威馬中徳汽車科技成都有限公司(威馬成都公司と略称する)、威馬汽車科技集団有限公司 (威馬集団公司と略称する)、威馬智慧出行科技(上海)有限公司(威馬上海公司と略称する) 

被上訴人(原審被告):成都高原汽車工業有限公司(高原汽車公司と略称する)

 

2018 年 10 月、高原汽車公司は、威馬成都公司が出願した 8 件の専利は、高原汽車公司の元従業員が高原汽 車公司で在職中に獲得した商業技術の秘密情報を利用してなし得たものであり、威馬成都公司は高原汽車の 営業秘密を侵害したと訴えた。該事件の番号は(2018)川民初 121 号である。訴訟を起こした後、高原汽車公 司は威馬集団公司、威馬上海公司を被告として追加した。高原汽車公司は(2018)川民初 121 号事件におい て、主張した営業秘密の権利者が高原汽車公司であること、秘密技術が営業秘密の法定条件を満たすこと、 及び係争秘密点と係争専利の同一性を証明しなかった。 威馬成都公司、威馬集団公司、威馬上海公司は、(2018)川民初 121 号事件の係争専利のすべてはその自主研 究開発によるものであり、不正な手段で知った高原汽車公司の商業秘密ではなく、高原汽車公司の商業秘密 を侵害していないと主張した。高原汽車公司は(2018)川民初 121 号事件の開廷審理後に訴訟を取り下げ、 訴権を行使するか否かの意思表示がまた非確定の状態になってしまい、威馬成都公司、威馬集団公司、威馬 上海公司が商業秘密を侵害したかどうかは長期的に非確定の状態にあり、その正常な生産経営に深刻な影響 を与えた。威馬成都公司、威馬集団公司、威馬上海公司は 2020 年 1 月 10 日に高原汽車公司に催告状を郵送 し、真の意図を明らかにして訴権を行使するよう書面で催告したが、高原汽車公司は受領してから 1 ヶ月た っても何の返答もなかった。故に威馬成都公司、威馬集団公司、威馬上海公司は本件の知的財産権非侵害確 認の訴訟を提起した。

 

四川省成都市中級人民法院の一審では、高原汽車公司が前件訴訟を提起したあとその訴訟を取り下げたが、 商業秘密侵害を訴える行為を放棄していないことは、威馬成都公司、威馬集団公司、威馬上海公司に対して 営業秘密侵害の警告をしたこととみなすべきである。威馬成都公司、威馬集団公司、威馬上海公司の催告状 には、前件における高原汽車公司による権利侵害の主張を否定し、再起訴するよう求める内容が含まれてお り、この催告は有効な催告と認める。8 件の係争専利に関する技術の取得、専利出願行為が高原汽車公司の 商業秘密を侵害しているとの警告について、高原汽車公司はすでに催告の前に訴訟を起こしたため、本件に おいて、この 8 件の専利に関する行為が権利を侵害していないとの威馬成都公司、威馬集団公司、威馬上海 公司の確認要求は、この種の訴訟の起訴条件を満たさないので、棄却すべきである。威馬成都公司、威馬集 団公司、威馬上海公司が本件において非侵害確認を求めたその他の行為については、一方、権利侵害警告の 範囲を超え、起訴の理由を欠くと見なし、他方、この要求は関連する所有権紛争事件の審理範囲に該当する ため、別途に受理すべきではない。したがって、法院が一審で、威馬成都公司、威馬集団公司、威馬上海公 司の起訴を棄却すると判決した。

 

威馬成都公司、威馬集団公司、威馬上海公司は一審判決を不服として控訴した。最高人民法院が二審で、控 訴を棄却し、原判決を維持すると判決した。

 

代表的な意義 

 

本件の審理により、『最高人民法院の知的財産権民事訴訟の証拠に関する若干の規定』第 5 条の規定に対して 具体的な適用基準が提供され、すなわち、被告が起訴してから取り下げた行為を権利侵害警告をしたとみな すべきか否かをどのように認定するか、催告の範囲が知的財産権非侵害確認紛争の訴える内容と合致しない 場合に有効な催告として認定すべきか、および合理的な期限内に訴訟を提起したかをどのように認定するか などである。法院は知的財産権非侵害確認紛争の起訴要件について詳細な分析と論証を行い、このような事 件の審理に対して法律の準用参考を提出した。本件は『最高人民法院知識産権法廷裁判要旨(2022)』に入選 した。

 

 ソース:知識産権家 

 

https://mp.weixin.qq.com/s/44M40LknA65e0HQR8DbvRQ