実用新案特許の進歩性判断における類似・関連技術分野の確定

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[ 2024-12-23 ]

                                                                                                                                                                                                     ――(2022)最高法知行終41号

裁判要旨

 

実用新案専利の技術分野を確定する際には、請求項に限定される技術案を対象とし、主題名称を出発点として、特許技術案の機能、用途を総合的に考慮しなければならない。専利技術案と機能、用途が類似する技術分野は、専利技術分野の類似技術分野を構成し、専利技術案と最も近い従来技術の相違する技術的特徴が適用される技術分野は、専利技術分野の関連技術分野を構成する。

 

キーワード 

 

行政 実用新案専利権無効 進歩性 近い技術分野 関連技術分野 

 

事件の経緯

 

陳某建は特許番号が201620169331.2で、名称が「アルミゲートCMOS金属配線のレイアウト構造」である実用新案専利の専利権者である。2020年7月15日、深セン市恒某公司は本専利権に対して無効宣告請求を提出した。これに対して、国家知識産権局は2021年1月4日に第47707号無効宣告請求審査決定を下し、本専利権が有効であることを宣告した。深セン市恒某公司は不服とし、一審法院に訴訟を提起して、被訴決定を取り消し、国家知識産権権局で改めて決定を下すように判定することを求めた。

 

一審法院は2021年9月22日に深セン市恒某公司の訴訟請求を棄却する行政判決を下した。深セン市恒某公司は上訴を提起し、最高人民法院は2022年12月29日に(2022)以下のように最高法知行終41号行政判決を下した。一、一審法院の行政判決を取り消す。二、国家知識産権局の第47707号無効宣告請求審査決定を取り消す。三、国家知識産権局は、深セン市恒某公司が専利番号201620169331.2で、名称が「アルミゲートCMOS金属配線のレイアウト構造」である実用新案専利に対して提出した無効宣告請求審査決定について改めて審査決定を下す。

 

裁判意見

 

法院発効判決は、技術分野の確定において、請求項に限定される内容を基準として、一般的に専利の主題名称に基づき、技術案によって実現される技術的機能、用途を結合して確定すべきであると判断した。類似技術分野とは、一般に、実用新案専利製品の機能および具体的用途に近い分野を指す。関連技術分野とは、一般に、実用新案専利と最も近い従来技術の相違する技術的特徴が適用される機能分野を指す。

 

本専利の請求項1が保護しようとするのは、アルミゲートCMOS二層金属配線のレイアウト構造であり、従来技術における単層金属のアルミゲートCMOSプロセス設計の製品集積度が低いという問題を解決することを目的とする。上記の問題を解決するために、本専利の請求項1が採用した技術手段は、主に、既存の単層アルミゲートCMOS金属配線構造の圧接点(輸入と輸出PAD、電源とアースPAD)を第二層金属構造として第一層金属構造上に配置し、すなわち、アルミゲートCMOS構造上に配置することによってアルミゲートCMOSの集積度を向上することである。本専利の請求項1のレイアウト構造の進歩性を評価するために、一審判決及び被訴決定は、いずれもシリコンゲートとアルミゲートゲートの材料が異なるという点に基づき、シリコンゲートCMOS集積回路とアルミゲートCMOS集積回路は異なる技術分野に属すると認め、更に両者の技術案は実質的に同一ではなく、本専利の請求項1は進歩性を備えると認定した。本専利の請求項1と証拠1、2、3、5、6、7の相違する技術的特徴は、証拠1、2、3、5、6、7はすべてシリコンゲートCMOS金属配線構造を開示し、いかなる「アルミゲート」に関する内容も開示していないということである。半導体工業の初期には、CMOSのゲート材料として金属アルミニウムが一般的に使用され、その後シリコンがゲート材料として広く使用された。アルミニウムからシリコンへのゲート材料の発展は確かに半導体デバイスの改良であるが、アルミゲートとシリコンゲートとの差異は、本専利で採用した二層金属配線のレイアウト構造の技術案に実質的な影響を与えず、ゲート材料の選択は本専利に対する技術的貢献として見なしてはならない。したがって、本専利はシリコンゲートCMOS二層金属配線構造と機能が同じで、用途が近いため、CMOS集積度を向上させる原理は基本的に同じであるため、シリコンゲートCMOS二層金属配線構造を本専利の同一または類似技術分野と見なすことができる。被訴決定及び一審判決は、本専利の進歩性の評価において、シリコンゲートCMOS二層金属配線構造を考慮せず、これは法の適用上の誤りに該当する。

 

ソース:最高人民法院知識産権法廷

 

https://ipc.court.gov.cn/zh-cn/news/view-3515.html