契約違反で提出した出願は専利権を享有すべきでない

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[ 2025-02-27 ]

 

――(2022)最高法知行終2951

最近、最高人民法院知識産権法廷は化工分野の専利権をめぐった紛争事件を判決し、契約上の明確な制限がある場合、技術譲受人は技術提供者の許可を得ずに、提供者が提供した技術案を無断で利用して専利出願を提出した場合、提供者の技術案に基づいて一定の改善を行ったとしても、契約書の約束と提供者の意向に違反したため、譲受人がその改善によって当たり前に専利権を享有すべきだとは言えないと認めた。

上海某建設機械製造有限公司(以下上海某公司と略称する)は訴訟を提起して、安徽某有限公司(以下安徽某公司と略称する)名義の「ラクチドの精製システム及び精製方法」という専利(以下関係争専利と略称する)のほとんどの技術的特徴が、上海某公司及び関連公司から提供された技術であると主張し、係争専利権は上海某公司に帰属されることを確認することを求めた。

一審法院審理により、、20187月、上海某公司の関連公司の某化工有限公司と安徽某公司の関連公司の某国際貿易有限公司は「ポリ乳酸装置納品の基礎工程設計、技術サービス及び専用設備」という契約(以下契約Aと略称する)に署名し、某化工有限公司が某国際貿易有限公司にポリ乳酸装置の基礎工程設計プロセスパッケージ、技術サービス及び工程設備を提供することを約束した。20189月、上海某公司と安徽某公司は「ラクチド精留装置プロジェクト」に関する契約を締結して、上海某公司が安徽某公司にラクチド精留装置プロジェクトに使用する関連製品と設計プロセスを提供し、技術サービスを提供することを約束した。某化工有限公司は、某化工有限公司が契約Aに基づいて某国際貿易有限公司に提供した技術に対し、その中国大陸での専利の出願権利及び専利の所有権は上海某公司に帰属されるとの『声明』を出した。安徽某公司は2019年に係争専利の出願を提出し、2020年に権利を取得した。

一審法院は、専利出願および授権の審査記録から、上海某公司と安徽某公司は、いずれも係争専利技術案の実質的な特徴について進歩性の面で貢献しており、貢献の大きさを区別することが困難なため、双方が係争専利権を共有すると推定して、上海某公司を係争専利の共有権者と確認する判決を下した。上海某公司と安徽某公司はいずれも一審判決に不服して、それぞれ上訴した。

最高人民法院は、二審において、契約A6章の権利制限部分によれば、某化工有限公司の事前同意を得なかった場合、某国際貿易有限公司は本契約内で得たいかなる情報および文書を第三者に開示してはならないと規定していることを確認した。20192月、某国際貿易有限公司、安徽某公司、某化工有限公司は譲渡契約を締結し、契約Aを安徽某公司に譲渡し、安徽某公司が某国際貿易有限公司の契約A上の権利と義務を引き継ぐことを約束した。技術比較の結果、係争専利の請求項1の大部分の技術的特徴が上海某公司およびその関連公司が安徽某公司に提供した技術案に由来したものであり、係争専利出願は最初の審査後、引用文献に対する進歩性を反映するために、安徽某公司が原請求項1を一部修正し、追加した技術的特徴は係争専利の「際立った実質的特徴」に対する技術貢献と見なすことができ、これらの技術貢献は上海某公司およびその関連公司が安徽某公司に提供した技術案にすべて反映されている。

最高人民法院は、専利法における発明者とは、発明創造の実質的な特徴に対して創意的な貢献をした者を指すと認定した。安徽某公司は上海某公司およびその関連公司が契約を通じて提供した全体の技術案に基づいて、一部の技術的特徴を改良した技術案を、国家知識産権局の実態審査を経て専利権を取得したが、双方はいずれも係争専利技術案に貢献した。しかし、証拠によれば、上海某公司およびその関連公司が係争専利の既存技術に対する際立った実質的特徴に対して主要な貢献をし、安徽某公司の技術貢献の割合は小さい。契約に明確な制限がある状況で、安徽某公司は許可を得ずに、上海某公司およびその関連公司が提供した技術案を勝手に利用して専利出願をしたが、その技術案に基づいて一定の改良を行ったとしても、契約の約定及び上海某公司の意思に反するため、安徽某公司がその改良によって当たり前にに係争専利権を享有すべきだとはいえない。上海某公司にとっては、係争専利技術案が公開された後、被動的に自身の知的財産権保護方法に対する選択権を失うことになり、安徽某公司と係争専利権を共有すれば、権利行使において共有専利権者の制約を受けることになる。権利共有を判決することは上海某公司が享有すべき合法的な権益を十分に保護できず、技術成果の円滑な転化と利用にも不利である。安徽某公司は誠実信用原則に違反し、明らかな過失があり、全体の係争専利技術案における技術貢献も小さい。したがって、最高人民法院は二審において上海某公司が係争専利権者であるとの判決を下した。

本事件の二審判決の結果は、明白な過失がある主体が他人の技術案を専利出願によって自己のものと主張することを防止するのに有利であり、技術取引における技術提供者の合法的な権益を効果的に保護し、技術契約履行過程で他人が提供した非公開技術案の改良によって発生する専利権帰属紛争の判決に一定の参考価値がある。

ソース:最高人民法院知識産権法廷

https://ipc.court.gov.cn/zh-cn/news/view-3811.html