全国法院の典型判例|「空気清浄機」発明専利権侵害紛争事件

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[ 2022-11-25 ]

専利篇

 

第22回世界知的財産権月において、China IPは、「2021年全国法院の知的財産権典型的な判 例」を特別に推薦した。今回の企画において、全国各地の30個近くの法院が推薦する188の典型判例を 取り上げ、読者が中国における知的財産権事件の裁判動向と発展特徴をより詳細に理解できるようにした。 

 

「空気清浄機」発明専利権侵害紛争事件

 

 一審の事件番号 :(2015)京知民初字第1679号 

 

二審の事件番号 :(2019)京民終369号

 

裁判要旨

 

被疑侵害製品の専用部品の技術は、他の用途にも使用可能であるが、係争専利の技術案において、重要かつ 不可欠な役割を果たした。故に法院は、この専用部品の「実質的な非侵害用途」が他に存在しないと判断 し、専利権への侵害に寄与したと認めた。

 

本件の事実関係

 

 控訴人(元被告):南京宇潔環境システム技術有限公司(以下、宇潔公司)、航天通信控股集団股份有限公司 北京科技分公司(以下、航天通信北京分公司) 

 

 被控訴人(元原告):達爾文技術国際有限公司(以下、達爾文公司)

 

達爾文公司は、専利名称「空気清浄機」の発明専利権者である。この専利は、2007年12月26日に専 利権を取得し、主に煙霧を防止するための空気清浄機として使用される。達爾文公司は、航天通信北京分公 司が、2014年11月から達爾文公司の係争発明専利権を侵害した「J·inG悟浄高効縦型空気清浄機」 を製造、販売、売買の申し出をしていたことを発見した。また、宇潔公司は、係争専利を実施するための専 用の電気集塵フィルターを航天通信北京分公司に提供、販売していた。2012年、達爾文公司は、宇潔公 司に対し、係争専利権の侵害に寄与した電気集塵フィルターを無許可で製造している行為について、弁護士 による警告書を送ったことがある。よって、達爾文公司は、二つの被告に対し、権利侵害行為の停止と、経 済的損失および合理的な支出合計100万元の賠償などを求め、法院に提訴した。

 

 北京知識産権法院は一審において、次のように判断した。被疑侵害製品の技術案が係争専利の請求項1~ 3、15、18~21、24~27の保護範囲に入ったため、航天通信北京分公司および宇潔公司の係争行 為は権利侵害に該当し、被疑侵害製品が先行技術を使用しているという彼らが提出した抗弁は成立しない。 そして、航天通信公司北京分公司は、達爾文公司の専利権を侵害した係争被疑侵害製品を製造、販売し、宇 潔公司は、その中に含まれるハニカム凝固フィルターを提供した。被疑侵害製品に含まれるハニカム凝固フ ィルターは、エアコンにも使用可能であるが、係争製品の空気清浄機に適したサイズを有しており、且つ、 係争専利の製品を実施すために使用されるときだけ、粒子沈着効果を発揮することができる。よって、ハニ カム凝固フィルターは、係争専利を実施するための専用製品であり、「実質的な非侵害用途」を有しない。宇 潔公司は、係争専利の存在を認識しており、ハニカム凝固フィルターが係争専利を実施するための専用部品 を明らかに知りながら、依然として航天通信公司北京分公司に提供したため、その専利権の侵害に寄与した 行為人は、主観的な故意がある。したがって、宇潔公司は、航天通信北京分公司の権利侵害行為に寄与して おり、共同侵害を構成する。以上に基づいて、法院は一審判決において、二つの被告が権利侵害行為を停止 し、連帯して達爾文公司に経済的損失35万元および合理的な支出15万元を賠償するよう判決した。

 

宇潔公司、航天通信北京分公司は、一審判決に不服があり、北京市高級人民法院に控訴した。北京高院は二 審判決で、控訴請求を棄却し、原判決を維持した。

 

典型的な意義 

 

本件は、専利権侵害紛争において、寄与侵害の認定に関する典型的な判例であり、技術的用途の分析に及ぶ だけではなく、寄与者の主観的意図の判断にも及ぶものである。本件の判決は、被疑侵害製品の主な機能と その実施目的を結合して考慮し、被疑侵害製品の専用部品の技術がエアコンフィルタに用いることができる ものの、係争専利の技術案において、重要かつ不可欠な役割を果たしたと判断した。寄与者の明らかな主観 的な故意を考慮した上で、提供された専用部品の「実質的な非侵害用途」が他に存在しないと判断した。 

 

司法判断は、技術発展を制限してはならないが、技術中立という名義で侵害事実を隠蔽することも防がなけ ればならない。本事件は、訴訟における「実質的な非侵害用途」の認定規則に対し、参考の意義がある。 

 

本件は「2021年度北京法院知識産権司法保護十大事件」に入選された。

 

ソース:知識産権家

https://mp.weixin.qq.com/s/Rs6Y-1iegmDWFnmoevlUSw