一審の事件番号 :(2016)粤03民初2842号
二審の事件番号 :(2020)最高法知民終296号
裁判要旨
許可を得ずに、他人の技術的成果を無断で自分の専利として出願し、取得した専利権を利用して実際の権利者に権利侵害の逆主張をすることは、典型的な悪意のある権利侵害に該当する。このような行為に対する審査判断は、事前の接触可能性、技術形成の前後性、技術案の一貫性などを総合的に分析しなければならない。専利出願又は権利行使は誠実の原則に従わなければならない。出願人が悪意で出願した専利権を利用して悪意の権利行使をして、実際の権利者に損害をもたらした場合、その主観的悪意及び侵害の情状により、その損害賠償責任を確定しなければならない。
事件の紹介
原告:艾黙生電気(珠海)有限公司(以下、艾黙生珠海公司と略称する)
被告:深セン市艾阿爾電気有限公司(以下、艾阿爾公司と略称する)
第三人:王氏
艾阿爾公司は係争の「ホットヒューズプレス装置」実用新型専利の専利権者で、この専利権は2010年11月10日に授権公告がされ、発明者は王氏である。2016年、艾阿爾公司は広東省知的財産局に艾黙生珠海公司及びその委託加工側が係争専利権を侵害したと告訴した。その後、艾黙生珠海公司は法院に訴訟を提起して、艾黙生珠海公司が上述専利の専利権者であることの確認を請求し、艾阿爾公司が経済的損失及び合理的費用100万を賠償するよう判決することを請求した。調査によると、艾黙生電気公司傘下のTherm-O-Disc公司は1960年代から「ホットヒューズプレス装置」などの関連技術を開発してきた。1998年からTherm-O-Disc公司は「ホットヒューズプレス装置」に関する技術成果及び全部の専利を艾黙生深セン公司に譲渡し、艾黙生深セン公司は登録抹消が承認される前に艾黙生珠海公司にこれらの技術成果及び全部の権利を譲渡した。係争専利発明者の王氏は艾黙生深セン公司で勤務したことがあり、艾黙生深セン公司がTherm-0-Disc公司から入手した「ホットヒューズプレス装置」図面に接触したことがある。王氏は艾黙生深セン公司を辞任した後、艾阿爾公司に勤務し、艾阿爾公司の要求によって「ホットヒューズプレス装置」の技術に対し専利出願をした。
深セン市中級人民法院は第一審で、艾阿爾公司は係争技術が艾黙生珠海公司から由来していることを知りながら、故意に専利を占有して出願を行い、更にこの専利を利用して艾黙生珠海公司及び委託加工側に行政告訴及び侵害訴訟を提起したことは、他人の技術成果を悪意的に占有した行為に該当すると認定した。以上により、法院の第一審では、係争専利権は艾黙生珠海公司に帰属され、艾阿爾公司の主観的悪意と損害事実を総合的に考慮して、艾阿爾公司が艾黙生珠海公司に経済的損失及び権利行使のための合理的支出100万人民元を賠償するよう判決した。
艾阿爾公司は一審判決に不服して、最高人民法院に控訴した。最高人民法院の第二審では、訴訟請求を棄却し、原審判決を維持すると判決した。
典型的な意義
本事件は他人の技術成果を占有して専利を出願し、逆権利行使をした典型的な事例であり、権利の帰属を明確にするとともに権利侵害の損害賠償を判決する生々しい実践である。本案の判決では、他人の技術成果を占有して不法に専利出願を行い、実際の権利者に権利侵害の主張をする行為は、明らかに誠実の原則に違反し、その損害結果に相応する民事責任を負わなければならないことを明確にした。
本事件の判決では、実際の権利者の賠償訴求の全額を支持し、不誠実な行為を厳しく取り締まり、革新環境の裁判理念と司法価値志向を浄化しており、知的財産権訴訟誠信のシステム構築に重要な意義を有する。
ソース:China IP
https://mp.weixin.qq.com/s/h-kgD0t-N--n5WT9Z1x_8g