全国法院の典型的な判例|「一種の止血クリップ」発明専利権侵害紛争事件

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[ 2022-12-21 ]

 

専利篇

 

第22回世界知的財産権月において、China IPは、「2021年全国法院の知的財産権典型的な判例」を特別に推薦した。今回の企画において、全国各地の30個近くの法院が推薦する188の典型判例を取り上げ、読者が中国における知的財産権事件の裁判動向及び発展特徴をより詳細に理解できるようにした。

 

「一種の止血クリップ」発明専利権侵害紛争事件

 

一審の事件番号 :(2020)浙知民初字第261

裁判要旨

専利が合法的な保護を求める場合は、まずその保護範囲について専門的な解釈が必要であり、その場合は専利無効審査決定の観点を結合して解釈及び確定を行うことができる。専利技術案で具体的な範囲を限定しなかった予定値」の表現が機能的特徴に属するか否かについては、当業者が請求の範囲、明細書及び図面の内容を読むことにより、当該専利技術案の予定値が存在し、当該予定値に達すると技術的作用が発生すると判断できれば、当該専利明細書における予定値の例示は機能的特徴を構成しないことを判断基準として明確にすべきである。

 

本件の事実関係

 

原告:南微医学技術股份有限公司(以下、南微公司

被告:諸鵬天医療機器有限公司(以下、鵬天公司

 

南微公司系専利番号ZL201410222753.7専利名称一種の止血クリップ」の発明専利権者である。南微公司は鵬天公司が製造·販売した「使い捨て止血クリップ」製品が発明専利権を侵害した疑いで法院に提訴した。

 

寧波市中級人民法院第一審において、まず、係争専利請求項1の「ワイヤーハーネスに加わる引張力が予定値に達したとき、ワイヤーハーネスが前記可動ピンから離脱する」という技術的特徴の理解について、当該請求項は当該予定値の具体的な数値を具体的に示していないが、当業者は請求範囲、説明書及び図面の内容を読むことにより、ワイヤリングに一定の力が加わるとワイヤリングが引き裂かれることが分かる。具体的な力の大きさはワイヤリングの材質、寸法、構造に依存するため、この予定値は上位概念であり、機能的な技術的特徴ではない。また、被疑侵害製品のタイロッドについては、一定の力を加えた後に引き裂かれることも可能であり、その力の具体的な数値が予定値であるため、被疑侵害製品はこの技術的特徴を備える。次に、請求項1の「折り曲げ構造」に対する理解について、係争専利の折り曲げ構造は、折り曲げ構造とピンと係合する際に、折り曲げ構造が滑りにくく、ロック作用をするが、係争専利無効決定で認められた証拠1の生検ペンチはロックができず、再び開くことができるため、係争専利の折り曲げ構造が開示してないが、被疑侵害製品における構造及び機能は同じであるため、被疑侵害製品はこの技術的特徴を備える。以上に基づいて、法院は一審判決において、被告の被疑侵害製品が専利侵害を構成したと認め、被告に原告の経済的損失15万元を賠償するよう判決した。

 

典型的な意義

浙江省は医療製品を製造する大省である。寧波知的財産権裁判所は今回の事件の審理において初めて電子顕微鏡などの先端技術を利用して精密医療機器製品に対する対比を行った。専利が合法的な保護を求めるには、まず専利の保護範囲について専門的な解釈が必要がある。本案において、法院は、専利無効審査決定における観点を引き入れて解釈及び決定を行うことにポイントを置いており、このような専利無効審査を経た専利侵害事件については典型的な意義がある。

 

専利技術案において具体的な範囲を限定しなかった「予定値」の表現が機能的特徴に属するか否かの争点については、本件判決は、当業者が請求範囲、明細書及び図面の内容を読むことにより予定値が存在することが分かり、当該予定値に達すると技術的作用が発生すると判断できる場合、当該専利明細書における予定値に関する例示は機能的特徴を構成しないことを判断基準として明確にした。法院の判決は、明確で説得力のある裁判基準で、同じ種類の事件の審理のため参考の意義を提供する。

 

本件は「2021年度北京法院知識産権司法保護十大事件」に入選された。

ソース:知識産権家