実用新案権における機能的な特徴内容の認定

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[ 2022-07-15 ]

 ——(2021)最高法知民終 411 号 最近、最高人民法院知識産権法廷は一件の実用新案権侵害訴訟を結審した。対象の実用新案権には、機能的な特徴 である「現像層」が含まれており、明細書には「現像層」の物質の組成成分、組成等の形状、構造、或いはそれら の組合せの技術特徴ではない技術的特徴が開示された。 最高人民法院は、実用新案において、機能的な特徴を実現するために限定された、明細書及び図面に記載された機 能、効果に不可欠な形状構造の特徴と非形状構造の特徴が、いずれも機能的な特徴に対して実質的な限定作用を有 し、いずれも機能的な特徴の内容となり、侵害判定の際に考慮すべきである、という意見を述べた。 被訴権利侵害製品の淡い三色メッシュ表面で構成されている現像層は、接着剤と石粉からなるが、当該接着剤と石 粉が、上記明細書に記載の「現像層」の具体的な実施形態及びそれと均等の実施形態と同様な技術的特徴があるか 否かについては、専利権者が証明しなかった。よって、上訴を却下し、原審判決を維持した。 胡氏が 2010 年 8 月 10 日に国家知識産権局に、「多機能プラスチック筆記板と筆記用具」という名称の実用新案(以 下、対象の実用新案という)を出願した。そして、2011 年 5 月 4 日に登録公告され、専利番号は ZL201020293455.4 である。 対象の実用新案の請求項1:プラスチック紙またはプラスチック板をベースとする多機能プラスチック筆記板であ って、プラスチック紙またはプラスチック板の片面または両面がマット処理されてマット層を形成し、現像層が片 面のマット層と接着して接合されていることを特徴とする多機能プラスチック筆記板。請求項2:現像層が、1 層ま たは 2 層の石粉混合層と接着した後、片面のマット層と接着して接合されていることを特徴とする請求項 1 に記載 の多機能プラスチック筆記板。対象の実用新案の明細書に記載された発明を実施するための具体的な実施形態にお いて、[0054]、[0057]〜[0061]段落は現像層の原料、組成成分等を詳細に説明した。 胡氏は 2019 年 9 月 16 日に浙江省杭州市中級人民法院に訴訟を提起し、被訴権利侵害製品が対象実用新案の請求項 2 の保護範囲内に属すると主張し、また、対象の実用新案の請求項 2 の現像層が機能的な特徴であることを明確にし た。杭州市中級人民法院は、被訴権利侵害製品の現像層が 1 層または 2 層の石粉混合層と接着した後、ベースと接 着して接合されていることであるか否か、及び被訴権利侵害製品の現像層が対象の実用新案の現像層の構成方式を 採用したか否かは、被訴権利侵害製品の現状のみに基づいて確認できない、という意見を述べ、胡氏の全ての訴訟 請求を却下した。 胡氏は、一審判決を不服として、最高人民法院に上訴したが、最高人民法院は上訴を却下して、原審判決を維持し た。 最高人民裁判所は、「現像層」の構成方式に関し、その争点の実質的内容は、実用新案は物品の形状、構造又はそれ らの組合せのみを保護するものであり、明細書第[0054]、[0057]~[0061]段落の現像層の組成成分、組成等の、形状、 構造又はそれらの組合せの技術特徴ではない技術特徴について、「現像層」の技術特徴が確定された内容として解釈 すべきか否かということである。実用新案専利において機能的な特徴の関連実施例で形状、構造、或いはそれらの 組合せの技術的特徴ではない技術的特徴がもし機能、効果を実現するにあたって必須なものならば依然として該当 機能的な特徴の保護範囲に対する限定を構成する。実用新案専利は形状、構造またはそれらの組合せに対する保護 を目的とする専利類型プであるが、機能、効果を実現するにあたって必須の実施例における、形状、構造またはそ れらの組合せの技術特徴ではない技術特徴の限定作用を排除する十分な理由にはなりえない。 対象実用新案の請求項 2 に記載の「現像層」は機能的な特徴であり、その明細書第【0054】、【0057】~【0061】段 落には、現像層の原料、調合などが詳しく記載されいる。被訴権利侵害製品の淡い三色メッシュ表面で構成されて いる現像層は、接着剤と石粉からなる。したがって、胡氏は、上記明細書に記載の「現像層」の具体的な実施形態 における「現像」の実現に不可欠な技術的特徴と比べて、当該接着剤と石粉に係る技術的特徴が基本的に同様な手 段で同様な機能を実現し、同様な効果に達成すること、及び当業者が被疑侵害行為が発生する際に創造的な労働を せずに想到できることを証明しなければならない。 本件において、機能的な特徴を実現するために限定された、実用新案の明細書及び図面に記載された機能、効果に 不可欠な形状構造の特徴と非形状構造の特徴が、機能的な特徴に対して実質的な限定作用があることを明確にした。 今後の実用新案における機能的な特徴の内容の認定に対して、重要な参考になる。