中国で完成または部分的に完成された発明は、必ず中国国家知識産権局(CNIPA)の秘密審査を受けて海外で専利出 願を行わなければならない。これを怠ると、中国専利法第 20 条第 1 項に違反することになり、当該中国専利は無効 となる。 しかし実際、専利法第 20 条第 1 項により中国専利を無効にした勝訴事例はなく、その原因は請求人が発明を完成し た国家を証明するのが難しかったためであり、また以前は海外の専利出願が多くなかったためである。 興味深いのは最近、中国知識産権局復審委員会は初めて「秘密審査を受けなかった」という理由で専利無効審判審 決(第 55586 号)を下し、専利無効を宣告した。 2022 年 5 月 9 日に下したこの審決は、中国知識産権局復審委員会が 発明がどの国で完成したかを証明する方法を明確に示した。。 01 専利権者の住所 復審委員会は、専利権者の専利文献と公開された明細書に基づき、本発明の研究開発が中国で完成された可能性が あり、専利権者が海外で研究開発能力を持っているという反証がないため、この発明は中国で完成した可能性が高 いと判断した。 02 発明者の国籍 1)本中国専利は 4 人の発明者がおり、そのうち 3 人は海外で永住権のない中国公民であり、発明者の一部は専利権 者の会社に勤めている間、海外に行ってきたこともない。したがって、中国知識産権局復審委員会は反証がないた め、本発明は中国で完成されたり、少なくとも部分的に中国で完成された可能性が高いと判断した。 2)専利権者は、本発明の中国発明者の一人が 2016 年に米国に滞在する間、主に完成したものだと主張した。しか し、該当発明者のパスポート記録によると、該当発明者は米国で臨時出願提出日以前に 2016 年 11 月 13 日から 11 月 24 日までのたった 10 日間、米国に滞在したものと見られた。中国知識産権局復審委員会は、他の発明者による 貢献はともかく、わずか 10 日で完全な技術アイデアと解決案を完成することは大きな意味がないと判断した。 以上のことから、復審委員会は、専利権者の住所および発明者の国籍が、発明がどこで行われたかを示す 2 つの重 要な基準として考えていることを明らかにした。 したがって、もし申立人が第 20 条第 1 項を根拠として中国の専利を無効としたい場合、申立人はこの 2 つの基準に 着目して申立書を作成する必要がある。 専利権者が上記の 2 つの基準のうち一つを反論できる十分な反証を提示できなければ、判決は請求人にさらに有利 になりうる。 しかし、専利権者が、(i)海外で研究開発能力を持っていること、および/または(ii)中国人発明者が海外で十 分長い期間滞在して発明を完成したことを証明できる場合、復審委員会は、おそらく申立人を支持することが困難 であると判断できる。 いずれにせよ、中国企業や発明者が海外で専利出願を行うことが多くなっているため、CNIPA から秘密審査を受ける ことが必要になり、またこれは今までよりもっと重要なポイントになると思われる。 *CNIPA から秘密審査を受ける方法については、2021 年に当所で発表した文章を下記リンクからご参照ください。