10月8日、OPPOは、Sharpと特許ライセンスを達成した後、公式ウェブサイトを通じて、「両社が世界各地で展開していた特許紛争を友好的に解決した結果に満足する。今回のクロスライセンス契約は、OPPOの知的財産の強さを改めて示すものである。」との内容を発表しました。
同日、Sharpの公式ウェブサイトにも両社がライセンスを達成したことに関するニュースを発表しました。Sharpの管理執行役員は、「ライセンスの達成が、Sharpの特許組合の価値の向上を示すものです。」と述べました。
両社の発表から見ると、Win-Winになるクロスライセンスであると言えます。
しかしながら、ライセンスを達成する過程はスムーズではなく、両社がグローバル範囲内で一連の対抗訴訟を提起しました。
この記事では、OPPOとSharpのとの間の一連の訴訟のうち、標準特許ライセンス交渉及びライセンス条件に関して、OPPOが中国でSharpを提訴した事件をご紹介いたします。
以下の2つの理由から、本件が議論に値すると考えられます。
一方、今回の事件は、中国最高法院が初めてグローバル特許組合のライセンス条件に対する裁判を行った事件であり、このような事件が中国で訴訟可能で、中国法院は管轄権を持っているという点を肯定し、これに相応する裁判の観点は研究する価値があります。
もう一方、原告の訴訟主張及び双方の見解は、標準特許ライセンスに対する会社別の認識を示すもので、相応する内容も整理して分析する価値があります。
したがって、筆者は次の二つの観点から二つの文章に分けて事件を整理しました。
1.中国法院の裁判の考え方及び観点
2.当事者双方の主張
本文は、主に中国法院の裁判の考え方及び観点を探求します。
01.
事件の概要
公開された裁判文によると、OPPOの訴訟請求は次の三つの事項を含みます。
◆一方的に訴訟を提起する行為を含むSharpの交渉中の行為がFRAND義務に違反すると確認する。
◆Sharpの関連特許組合のグローバルライセンス条件を確定し、関連法院によりグローバル料率を確定する。
◆SharpのFRAND義務違反によりOPPOが受けた損失について、賠償を請求する。
深セン市中級人民法院(以下、「深セン中院」と略称する)が第一審法院として、最高法院が第二審法院として、管轄権異議申立手続きにおいて、本件の関連内容に対して裁判を行いました。
OPPOによる訴訟請求をめぐり、中国法院は、次の二つの問題に対して認定を行いました。1つ目は、グローバル標準特許組合のライセンス料の管轄権に関する問題であり、2つ目は、特許権侵害及び差止請求に関係なく、FRAND原則に違反するかどうかを確認する問題です。
最高法院による、中国法院がグローバル特許組合ライセンス条件を裁判することができるという見方が広く注目されています。また、法院は、Sharpの交渉行為がFRAND原則に違反するというOPPOの訴えを支持しました。料率の裁判に対して、そのような請求は中国法院の事件ではなかったはずです。
この事件において、中国法院は標準特許ライセンス紛争の裁判で相対的に積極的な司法態度を見せました。
02.
グローバルライセンス料に対する中国裁判
グローバル特許組合は、一般的に、複数の異なる国家の法律に従って権利化される特許を含みます。イギリス裁判所は、真先に案件においてグローバルライセンス料に対して裁判を行ったことがありますので、その後、当事者がイギリスに行ってグローバル料率についての裁判を求めることは多くなりました。
反対の観点は、1つの国の裁判所により特許組合全体に対して裁判を行うことは、当該国の法律の管轄範囲を超えていると認定します。異議があったとしても、このような訴えの存在及び当事者の行為から、一定の現実的な意義を持つと考えられます。
今回、中国最高法院はOPPOとSharpとの事件における裁判において、異なるレベルで「グローバルライセンス料に対する裁判は、中国で訴訟可能であり、中国は管轄権を持っている」との中国法院の態度を示しました。
これは、最高法院が初めてグローバルライセンス条件の裁判を求める事件に対して裁判を行った事件ですが、事件の初歩的な結論は決して意外の内容ではありませんでした。この前に、中国の異なる法院及び様々な学術的議論がこのような問題に対して結論を出したことがあります。つまり、中国の法律規定に従って、このような問題に対して裁判を行うことができます。
OPPOのこの事件に対して、最高法院は「当事者双方の交渉にはグローバルのライセンス条件が含まれ、中国で交渉したことがあり、特許組合における特許の大部分が中国の特許であり、実施者の実施地及び収入源が主に中国であり、中国で差押え可能な財産を持っているため、中国法院がグローバル料率に対して裁判を行うことが可能である。」と認定しました。
一審段階で、深セン中院も、類似した結論を出し、中国は最も密接な関係を持つ地域であると認定し、また、「グローバル料率の裁判は、効率全体の向上に寄与でき、原告と被告との紛争を本質的に解決することができ、当事者双方の間の異なる国での複数回の訴訟を効果的に回避することができ、FRAND原則の本意により適合している」と認定しました。
グローバルライセンス料に関する上記の議論は、以前の案件においても反映されたことがあります。
武漢中級人民法院(武漢中院)が受理した小米社とInterDigital社との間の案件にも、グローバルライセンス料の裁判に関する請求が含まれました。武漢中院は、訴訟差止命令の裁判において、「当事者双方の交渉が行き詰まった場合、ライセンス条件に対する裁判で法院に請求することが、FRAND原則の初志に適合しており、小米社の登録地、研究開発地及び特許実施地がいずれも中国であり、法院が管轄権を有する」と認定しました。
この2つの案件から、中国法院は、グローバル料率に対する裁判について開放的な態度を見せていることが分かります。
03.
FRAND原則に違反することへの確認に関する中国裁判
ライセンス料は、双方の交渉の目的でありますが、交渉の過程で具体的な行為を通じて、誠実かつ善意の交渉を推進しなければなりません。OPPOは、法院にライセンス料の確定を請求する以外、Sharpの行為がFRAND義務に違反すると認め、賠償を求める訴訟を起こしました。上記のように、そのような訴えは前の案件ではなかったはずです。
ライセンス料の訴訟が提起された時、当事者双方は有効なライセンス契約を締結しておらず、FRAND原則は基本的に双方を拘束する唯一のものであると言えます。この記事の観点から、両方の法的関係をどのように規定するか、FRAND原則をどのように理解するかは、FRAND原則違反の確認を請求する訴訟と関係があると考えられます。
この質問に対する答えは、世界各国の裁判所によって異なります。例えば、米国裁判所は、両者を契約関係とみなし、当事者の主体はFRAND違反で法院に提訴することができます。中国法院はこれまで、このような問題について比較的に明確な判断を下していなかったです。
三星がエリクソンを相手取って起こしたグローバルライセンス料率の確定訴訟で、武漢中院は当時、この案件が外国知的財産契約紛争案に該当すると明らかにしました。しかし、該認定は明確ではありません。
今回、OPPOとSharpの事件で、一審及び二審法院は、これらの事件の性質について、基本的に同一の判断を下しました。深セン中院は、このような事件が典型的な契約紛争や、典型的な権利侵害紛争ではないと判断しました。最高法院もこれを基本的に認め、「相対的に契約の性質が強い特殊類型の紛争」と見なし、契約紛争と特許権侵害紛争の特徴を兼ねると見なしました。
上記の認定により、深セン中院は、裁定書において、FRAND原則に違反する交渉行為を契約締結上の過失責任として定義しました。
一審裁定では、ライセンスを達成する前に、権利者は、FRAND声明により契約締結前の義務を負い、交渉を行う両方の間に特別な信頼関係を有し、標準必須特許権利者がFRAND/RAND原則及び誠実信用の原則に違反して標準必要特許の実施者に経済的な損失をもたらす場合、原告が、契約締結の過失責任を負うことを請求することができると、判断しました。
管轄権異議申立手続きの二審段階で、Sharpがこの点について上訴意見を出さなかったです。最高法院もこれに相応する論述を出していなかったです。
したがって、特許侵害を提起せず、交渉行為がFRAND義務に違反しているという主張を単独に法院に確認を請求することも、可訴性があるものと思われます。
04.
法院による裁判のまとめ
グローバル料率に対する裁判は、合理的です。結局のところ、実際には、グローバルライセンスが交渉の最終の目的であることが多いです。残った問題は、どの機関で裁判をするかであります。
中国の法律は禁止しておらず、中国法院も裁判が可能だと判断しており、少なくとも当事者に選択肢を与えています。
OPPOが訴訟を提起したのは、2020年でした。2021年1月に新たに施行された「民事事件事由規定」では、「標準必要特許使用料紛争」を独立した事件事由として挙げていました。法院が裁判する標準特許のライセンス料は、自国の特許組合であれ、グローバル特許組合であれ、裁判の可否の論理に実質的な差はないです。
結局、審判請求時点で契約が成立しておらず、最終契約は一連の商業的要因を考慮して価格をどのように決定するかだけであり、審判のライセンス条件である以上、事件においてどの特許が侵害になるかを独立的に判断する必要はないです。
商業的な角度から見ると、グローバル料率の裁定は、合理的であると言えます。
この案件において、法院は、FRAND原則に違反する行為に対して訴訟を提起することができると、さらに認定しました。お金に関する問題以外、交渉行為がFRANDに適合するか否かは、企業が誠実信用の態度をもって交渉に乗るか否かを示すものです。本事件でこのような種類の訴えについての裁判意見は、他の会社にも必ず相応する参考を提供すると考えられます。
出典:IPRdaily中国語ネットワーク(iprdaily.cn)
投稿者:Pan Junlin企業の知的財産権の観察
編集者:IPRdaily Wang Ying 校正:IPRdaily