FOUNDIN IPニュースレター2022年1月号(1)ー外国企業と中国特色の実用新案

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[ 2022-01-19 ]

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外国企業と中国特色の実用新案

 

   実用新案は、最近我が国で最も人気があり、特色のある特許保護形式として、2020年その出願申請件数は300万件(2021年は既に312万件に達した)近くで、ほとんど特許発明件数の2倍であった。

 

    よく知れ渡っているように、特許制度はもともとイギリスに由来した。1236年イギリス国王ヘンリー三世がある市民に各種の布を15年間作られる特権を付与し、それから200年余り後、ベニス共和国で世界最初の特許法(1623年のイギリスの「独占法」が世界最初の特許法という見解もある)が公布された。だが、実用新案制度は、1891年になって初めてドイツで誕生した。現在、世界でおよそ120カ所の国家と地域で実用新案あるいは類似制度を実行し、その中で93カ所の国家と地域は本国あるいは当該地域の実用新案制度を保有し、他の27カ所の国家はアフリカ広域知的財産機関(ARIPO)とアフリカ知的財産機関(OAPI)の加盟国として実用新案制度を導入している。 (注1)

 

    我が国が実用新案を保護する目的は、低コストと研制周期が短い小発明の創造を激励して、経済発展の需要により早く適応するためだ。周知のとおり、我が国で実用新案は無審査となっており、そのため一度「非正常申請」(注2)の重災区になったこともある。だが、その特色による優勢が明らかであるし、安価・迅速(無審査で、6-10カ月で権利付与が可能)に登録できるし、権利維持が容易(製品特徴の挙証がやすいし、権利侵害損害賠償の計算方式も発明と変わらず、1件の実用新案の権利侵害損害賠償金額が4000万元となる (注3))である反面、無効が難しい(創造性に対しての要求が低いため、無効されにくい)等の原因で、依然として国内で最も人気のある特許保護形式である。

 

    しかし、外国人申請者、特に申請者が企業の場合は、中国で実用新案を申請するにあまり興味を持っていないそうだ。2020年、我が国の特許発明登録件数が53万件であり、その中で外国人申請者の特許権登録件数は9万件で、およそ全体の17%を占めている。だが、年237万件近くの実用新案の場合、外国人申請者の登録訴件数はわずか8000件に過ぎず、全体の0.3%しか占めていない (注4)。このような状況を引き起こす原因として多数あるが、ほとんどの場合は外国人申請者の自国実用新案制度の影響を受けたものである。例え、ある国家の実用新案の場合は、権利維持も難しく、リスクも大きくて、無効にされやすいし、これらの国家(さらにいくつかの特許出願大国においても)で実用新案制度の存在性も極めて低いし、申請者の場合は本国でも申請しないし、中国でも優先権のない最初の申込みはほとんどない。

 

    産業グローバル化がますます完璧になりつつある今日この頃、多くの大手グローバル企業が我が国に研究開発センターを設け、その研究開発センターから産み出された新技術は、もし内部発明の要求に達しなければ、権利保護ができない。同じように、外国企業の本国での研究開発センターでも上記のように内部発明の要求を満たさないと、権利が保護されない。実際、もしこれらの技術は中国で実用新案制度によって、権利を取得すれば、コストパフォーマンスは言うまでもない。

 

    幸いにも、ますます多くの外国企業がこの点を認識し、最近、国内特許事務所で引き受けた、いわゆる「渉外執筆”」業務は次第に増えていき、その中で上記の新技術と関連する実用新案特許も少なくない。一般的なパタンとして、クライアントが技術資料(中国語又は外国語)を提供し、特許事務所から中文明細書を作成して局に提出する。必要な場合には、PCT申請も一緒に提出する。次の図1は、ある外国企業のために作った明細書作成から局提出までの流れの例である。図2は、明細書骨子の作成サンプルである。もちろんクライアントのニーズに応じて外国語で作成することもできる。

 

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    このように、明細書骨子の作成と特許請求の範囲までいずれも外国語で作成され、外国企業の業務担当者らは保護すべきの権利の範囲を明確に把握することができるだけでなく書類全体に限って翻訳料金も発生しない。

 

    前記のとおり、中国特色の実用新案は、安価・迅速登録可能し、権利維持が容易である反面、無効されにくいし、さらに外国企業にも適用されるため、良い選択と言わざるを得ない。

 

    筆者: Foundin IP 魏彥 (ぎ・げん、Yan WEI)/パートナー弁理士 

 

 

注釈

(1)  国家知識産権局専利局実用新案審査部

(2)  国家知識産権局:非正常申請行為の定義の解釈、《特許出願行為の規範化に関する方法》 が2021年3月11日に国家知的財産権

          局から公告された。(第411号)

(3)  2017年1月、格力電器は寧波奥克斯空調有限公司、広州晶東貿易有限公司に対しZL200820047012.Xの実用新案特許権侵

          害訴訟を提起した。

  2018年4月20日、広州知識産権法院は一審で、権利侵害が成立するし、4000万元の損害賠償を支払うよう判決した。

  2019年8月30日、広東省高級人民法院は二審で、一審原審を支持した。

  2020年4月10日、広東省高級人民法院は本件に関する《広東省高級人民法院執行裁定書》(2020)を発表した。粤執复117号

         (4)  国家知識産権局2020年度報告