FOUNDIN IPニュースレター2022年3月号ー「特許請求の範囲の用語解釈の合理性」に関する事例分析

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[ 2022-03-15 ]

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「特許請求の範囲の用語解釈の合理性」に関する事例分析

 

 

今回のニュースレターは、最高人民法院知識産権法廷が発表した「48選の典型的な事例、55つの裁判規則」の中で「特許請求の範囲の用語解釈の合理性」に関する事例を紹介する。

 

関連専利:「平面エコーイメージングシーケンス画像の再構築方法」発明専利(201310072198.X)

 

最高人民法院の(2019)最高法知行終61号行政判決文での見解:人民法院は、その技術分野に属する技術者が特許請求の範囲、明細書及び図面を読んで理解した一般的な意味で、特許請求の範囲の用語を定義しなければならないと主張した。請求項の用語が明細書及び図面において明確に定義又は説明されている場合、その定義に従う。

 

請求項を説明するために、いわゆる最大合理的原則が適用される場合であっても、請求項の用語の最大意味の範囲で、「合理的」な解釈を出発点及び着地点にすべきである。

 

依拠になる法条項:

専利法第二十二条第二項の規定により、「新規性とは、当該発明又は実用新案が先行技術に属さないこと、いかなる部門又は個人も同様の発明又は実用新案について、出願日以前に国務院専利行政部門に出願しておらず、かつ出願日以後に公開された専利出願文書又は公告の専利文書に記載されていないことを指す。」第五項の規定によると「本法でいう先行技術とは、出願日以前に国内外において公衆に周知された技術を指す。」

 

「専利権付与行政案件の審理に適用する法律においてのいくつかの問題に関する最高人民法院の規定(1)」第2条規定:「人民法院は、その技術分野に属する技術者が特許請求の範囲、明細書及び図面を読んで理解した一般的な意味で、特許請求の範囲の用語を規定しなければならない。請求項の用語が明細書及び図面において明確に定義又は説明されている場合は、その定義に従う。」

 

関連専利の請求項1

平面エコーイメージングデータSiを取得し、位相エンコードされていないリファレンスエコー信号R1、R2、R3を同時に取得(前記の三つのリファレンスエコー信号はそれぞれ偶信号、奇信号及び偶信号である)するステップ。

前記のリファレンスエコー信号により前記の平面エコーイメージングデータの補正が必要なパラメータを計算するステップ。

前記の平面エコーイメージングデータを読み出し方向に1次元フーリエ変換して変換結果FSiを得り、前記の補正パラメータを用いてFSiを補正し、補正後の平面エコーイメージングデータを計算するステップを含み。

補正された平面エコーイメージングデータを位相エンコード方向に1次元フーリエ変換して画像を得ることを特徴とする平面エコーイメージングシーケンスの画像再構成方法。

 

本専利の請求項1が新規性を備えているか否かについては、本専利請求項1の「計算」をどのように解釈するかに焦点が当てられている。シーメンス社は、最大合理的解釈の原則に基づいて、本専利請求項1における「計算」は、当該分野の技術者が理解する一般的な意味、即ち、既知量から未知量を算出するものと解釈すべきであり、その具体的な中間プロセスを制限すべきではないと主張する。引用文献1と本専利請求項1は、いずれも収集された3つのリファレンスエコー信号を計算して補正パラメータを求め、したがって、本専利請求項1は新規性を有しない。国家知識産権局及び聯影公司は、本専利請求項1における「計算」は、位相及びその他の情報を損失しない直接計算方式と解釈すべきであり、引用文献1は、S1+S3を平均した後に何らかの情報を損失した間接計算であり、請求項1における直接計算方式は開示されていないため、請求項1は新規性を備えていると主張した。

 

最高人民法院の見解は以下の通りである。本件における本専利請求項1の「計算」という用語の解釈は、単にその文字通りの意味ではなく、当該分野の技術者が特許請求の範囲と明細書及び図面を読んで理解することに准すべきである。いわゆる最大合理的原則を適用して請求項を説明する場合であっても、特許請求の範囲の用語の最大意味の範囲で、「合理的」な解釈を出発点及び着地点にすべきである。本専利発明の目的、明細書及び図面を合わせて理解した「計算」の解釈と説明によると、本専利中の「計算」は、すべての可能な計算方法を含むものではなく、その特定の意味を有する。まず、本専利は背景技術及び発明の概要では、先行技術は、第1及び第2のエコー信号から位相差を算出し、これらの位相差を補正量として収集した画像データを補正してもN/2アーティファクトを効果的に除去することができないこと、2次元位相補正法はN/2アーティファクトを除去することは効果的ではあるが、シーケンス収集時間が長くなり、平面エコーイメージングシーケンスは高速イメージングのメリットを失うことが指摘されている。したがって、本専利は、上記の欠陥を克服するために、より精確な平面エコーイメージングシーケンスの画像再構成方法を提供することを目的とする。このことから、本専利の発明の目的は、2つのエコー信号について位相差を計算することにより位相情報を失う計算方法を明確に排除したことが分かる。次に、当該分野の技術者は、特許請求の範囲、明細書及び図面を読んで、本専利の請求項1における「計算」は、位相及びその他の情報を失わない直接計算であり、「計算」という用語は、文字通りの意味で解釈すべきではないことを理解できる。引用文献1においても三つのリファレンスエコー信号(即ち第1のリファレンスエコーS1+、第2のリファレンスエコーS2-及び第3のリファレンスエコーS3+)を取集するが、開示されている計算過程は、第1のリファレンスエコーS1+と第3のリファレンスエコーS3+を用いて1つの補間エコーS2+を算出し、この補間エコーS2+と第2のリファレンスエコーS2-を用いて補正パラメータを算出することである。この計算方式は、第1のリファレンスエコーS1+と第3のリファレンスエコーS3+の一部の情報を損失し、補正の精確度に欠けることがあり、これは本専利において回避しようとすることである。したがって、引用文献1における「計算」は、本専利の請求項1における「計算」と同じではないことが分かる。引用文献1は、本専利の請求項1における位相情報及びその他の情報の損失がない場合の直接計算方式を開示していない。従って、本専利の請求項1は引用文献1において開示されておらず、新規性を有すると認められるべきである。原審法院の関連認定については、本院は認めない。国家知識産権局と聯影公司の関連上訴請求は成立し、本院はそれを支持する。

 

出典:最高人民法院