専利請求範囲の技術的特徴の発明目的を結合した解釈——(2021)最高法知民終第2211号

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[ 2022-09-19 ]

 

近日、最高人民法院知識産権法廷は、原告である安徽省涇県聚徳文化芸術品有限公司(以下、聚徳公司)、騏軒国際貿易(深セン市)有限公司(以下、騏軒公司)と被告である深セン市盈和皮具有限公司(以下、盈和公司)との実用新案専利権侵害紛争に対し、最終判決を下し、被疑侵害製品の対応する技術的特徴が、係争専利の請求範囲に係る技術的争点と同一または同等ではないと判断し、法律によって権利侵害が成立しないと改判した。

 

盈和公司は、専利番号が201420626802.9であり、名称が「USB付き手帳」である実用新案専利(以下、係争専利)の専利権者である。盈和公司は、聚徳公司、騏軒公司が専利権を侵害する行為をしたと認め、聚徳公司、騏軒公司に対し、侵害行為の即時停止、経済的損失および権利保護のための合理的な支出の賠償、並びに被疑侵害製品の生産に使用した金型及び在庫被疑侵害製品の即時廃棄を求める専利権侵害訴訟を、第一審法院に提起した。

 


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第一審法院は審理を経て、次のように判断した:被疑侵害製品において、ベルトの前部に配置された金属収容部材に、USB上の磁石や手帳の金属バックルと磁気的に接続可能な磁石が設けられておるが、この技術的特徴は被疑侵害製品が加えた技術的特徴に該当する。上記ベルトの前部に配置された金属収容部材に設けられた磁石を取り外しても、被疑侵害製品におけるUSBの抜き差しに影響を与えず、USB上の磁石も金属バックルと磁気的に接続可能なので、被疑侵害製品は係争専利の請求項1のすべての技術的特徴を有し、係争専利の請求項1の保護範囲に入る。また、第一審法院は、聚徳公司、騏軒公司が主張する先行技術による抗弁を認めず、聚徳公司、騏軒公司が直ちに侵害行為を停止し、経済損失10万元と権利保護のための支出3万元余りを盈和公司に賠償するように判決した。

 

聚徳公司、騏軒公司は、一審判決に不服があって、最高人民法院に上訴して次のように主張した:係争専利において、USBがない状態で手帳は係合できないことに対し、被疑侵害製品において、係合はベルトにより直接行われ、USBがなくても正常に係合でき、また、被疑侵害製品の「USBがベルトに直接挿入され、手帳の係合はベルトにより独立して行われる」という接続方法は、係争専利の「手帳の片側に金属バックルを固定し、USBの一端をベルトの他端に挿抜式で挿入し、USBの他端を金属バックルに磁気的に接続させる」という接続方法と異なり、両者は異なる技術的特徴を有し、異なる技術効果を実現するため、権利侵害を構成していない。被告は、原審の判決を取り消し、法によって盈和公司のすべての訴訟請求を棄却することを請求した。

 

最高人民法院は審理を経て、次のように判断した。係争専利の明細書の記載及び国家知識産権局の係争専利に対して下した第32309号無効審判請求審決の内容を照合し、係争専利の請求項1における「USBの一端をベルトの他端に挿抜式で挿入し、USBの他端を金属バックルに磁気的に接続させる」という技術的特徴は、全体的に理解されるべきものである。「USBの一端をベルトの他端に挿抜式で挿入する」ことと「USBの他端を金属バックルに磁気的に接続させる」ことを、いずれも対応する機能を実現するための独立した技術手段とすることができない。そのため、係争専利の請求項1における技術的特徴は、USBの両端を金属バックルとベルトにそれぞれ接続することで、USBが係合過程における必須部品となることである。係争専利の発明は、USBが取り外されたときに、ベルトにより直接手帳を係合できないため、使用者にUSBが残されたことを想起させ、USBを容易に紛失しない効果をもたらすことを目的としている。

被疑侵害製品に係る手帳の前面革層内には、円形磁石片が嵌められており、ベルトの一端は手帳の背面に固定され、他端は金属収容部材に接続されており、該金属収容部材の末端に円形磁石片を有し、手帳の前面における磁石片に吸着可能なため、ベルトにより手帳を係合できる。USBの接触端子を上記金属収容部材内に挿入し、USBの他端も磁性を有するため、USBを上記金属収容部材内に挿入すると、USBの磁性を有する他端が、金属収容部材の末端に吸着される。被疑侵害製品のUSBの接触端子は、ベルトの末端における金属収容部材に挿抜式で挿入するが、USBの他端は、手帳の前面における円形磁石片に磁気的に接続されない。被疑侵害製品は、USBなしでベルトにより手帳を係合可能であり、USBはベルトの末端における金属収容部材内に挿入され、金属収容部材に吸着されるだけであり、USBが取り外されたときに、手帳の係合に影響しないため、使用者にUSBが残されたことを想起させる効果を得られず、係争専利の発明目的を実現できない。要するに、被疑侵害製品に係る対応する技術的特徴は、係争専利の請求項1に係る上記技術的争点に用いられた手段、実現された機能及び効果と明らかに異なり、被疑侵害製品は係争専利の発明目的を実現できず、両者は同一または同等ではなく、被疑侵害技術案は、係争専利の請求項1の保護範囲に入らない。

 

本件の第二次審決は以下のことを明確にした。技術的特徴に対する解釈は、請求範囲の記載を踏まえたうえで、請求範囲と明細書を読んだ当業者の総合的な理解とを合わせて行うべきである。該当技術的特徴に用いられた技術手段のみならず、その技術手段を用いることで解決された技術課題、実現された機能及び効果を、発明の目的と併せて考慮すべきである。この事件は、専利請求の保護範囲を合理的に確定し、権利侵害判定を正確に行うことに対して一定の参考意義を有する。

 

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