請求範囲における数字「一」の解釈

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[ 2022-10-17 ]

最高人民法院は、本件の審理を通じて、一つの裁判規則を明確にした。すなわち、専利 請求範囲に数字「一」が含まれている場合、それが数量的に限定作用を有すると当然の ことのように判断されるべきではなく、その具体的な意味は、請求の範囲と明細書を読 んだ当業者の理解に従って決定されるべきものである。

 

 請求範 囲 における 数 字 「 一 」 の 解 釈 

                                                                     ——(2020)最高法知民終 1070 号 

深セン厨之道環保高科有限公司(以下、厨之道公司)は、「動き物理的遮断浄化器」の専利権者 である。厨之道公司は、深セン市中天美科技有限公司(以下、中天美公司)の製造した被疑侵 害製品が、係争専利の請求項 1 の保護範囲に入ったとして、中天美公司に対し、権利侵害行為 の停止及び損害賠償を求め、法院に提訴した。

 

 係争専利の請求項 1 は、下記の技術的特徴を含む。A.動的な物理的遮断浄化器であって、その 特徴は、中央ディスクと複数本の円形スポークを含む;B.前記スポークの一端は径方向に延び るように前記中心ディスクに固着されている;C.同一平面内 に設置されたスポークの直径とス ポークの本数の積は、46 以上 460 未満の値を満たす;D.計算において、スポークの直径はミリ メートル単位とし、且つスポークの直径は 0.3mm 以上である。二審では、 双方の当事者 は 、被疑侵害技術案 が技術的特徴 A、 B、 D と同じ技術的特徴を有すること を 確認し、技術的特 徴 C のみが争点となった 。被疑侵害製品のスポークが互いに平 行 な 2 つの平面を形成しており、 中天美公司 は、この特徴が請求項 1 に記載 の「同一平面内」とは明らかに異なると主張した。

 

 原審法院は審理を経て、次のように判断した。被疑侵害技術案と 係争請求項 1 は係争技術 的特徴において均等を構成する ため、権利侵害の成立を認め 、中天美公司が厨之道公司 に 50 万元を賠償するよう判決した。中天美公司は原審判決に不服して、最高人民法院 に控 訴した。二審は審理を経て、次のように判断した。原審法院が係争請求項 1 における数字 「一」に対する理解に誤りがある。被疑侵害技術案 と係争請求項 1 は係争技術的特徴にお いて、均等を構成するのではなく、同一であるため、権利侵害の成立を認め 、これによって 控訴を棄却し、原判決 を維持した。

 

 最高人民法院 は次のように判断した。専利請 求 範 囲 及 び 明 細 書 並 び に 図 面 を 読 ん だ当業者の技術的特徴 C に対する理解によれば、 この技術的特徴に限定された対象 は、同じ平面内 に位置するスポークの直径とスポークの本数の積である。 その核心的な 内 容は、スポークの太さと配列密度という二つの物理パラメータ 間の調和である。求 め る技術的効果は、 動的な物理的遮断浄化器の浄化率を最大限に高めることであり 、スポ ークで形成された平面の数ではない。言い換えれば、技術的特徴 C に記載された「同一平 面内」が 、「同じ平面内」として理解されるべきであり、 この理解はスポークで 形成された平面の数と は 関係がない。したがって、被疑侵害製品のスポークが互いに平 行 な 2 つの平面を形成している にもかかわらず、この技術的手段は、技術的特徴 C に限 定された技術的内容を変更するものではない 。すなわち、被疑侵害製品 のいずれか の 平面内におけるスポークの直径と本数の積が、技術的特徴 C に記載された数値の範 囲内にある限り、 被疑侵害技術案 は技術的特徴 C と同一な技術的特徴を有す るとみなされるべきである 。

 

 最高人民法院は、本件の審理を通じて、一つの裁判規則を明確にした。すなわち、専利 請求範囲に数字「一」が含まれている場合、それが数量的に限定作用を有すると当然の ことのように判断されるべきではなく、その具体的な意味は、請求範囲と明細書を読ん だ当業者の理解に従って決定されるべきものである。この判例は、請求範囲における特定 の数字の解釈について、一定の参考意義を有する。

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