中国国家知識産権局は、[2021]第 43 号「国家知識産権局の幹部配偶者、子女、及びその配偶者の特許及び商標代理 機関従業行為に対する規制」に関する通知を発表し、局員の家族による特許・商標業務従事を新たに制限しました。 この通知書第 3 条の内容によると、当該規制対象には、以下のような人員及び内容が含まれています。
局幹部は配偶者、子女、及び子女の配偶者の特許・商標代理機関での従事状況を事実に即して報告すること。本規定第 三条に違反する場合、幹部はこれを是正、即ちその配偶者、子女、及び子女を上記の業界・業務から離職させなければな らない。是正しない場合、幹部は公職から離れるか、組織による役職調整に従わなければならない。事実を隠蔽したり、離 職または組織による役職調整のいずれにも従わない場合、規律検査部門及び人事部門により関連規定に基づいた処置を 行う。
キーワード:合法的優先権、特許権の行使停止
概要:
原告「喜力酿酒厂有限公司(ハイネケン)」は 1864 年オランダで創立された世界的に著名なビールメーカーです。生産 するビール類商品には、「Heineken」や「喜力」の文字商標及び文字と図形の結合商標が使用され、その市場における 知名度は非常に高いものです。
被告である張増見らは会社登録の際に「喜力」の文字を使用し、「海纳啃 Hainaken」を商標として登録したほか、「XILI」 「xili」「HEINEKEN」「HAINEKEN」「Hainiken」「HAINIKEN」「喜力」「喜力ビール」などの商標をそのビール商品に使用し、ま た原告の商標と類似する図案、商号などをビールの缶、パッケージに使用し生産管理する目的で意匠出願をしていまし た。
訴訟に際し原告は商標権の侵害停止と「喜力」の使用停止、損害賠償、及ぼした影響の除去などの民事責任を主張 したほか、同時に被告に対し意匠における訴訟請求の実施を禁止するよう要求しました。
被告が登録した意匠権が有効である状況下で、民事権利侵害事件において裁判所に被告の特許権行使の禁止を請 求できるかどうかがこの案件における裁定のキーポイントとなりました。
本件において原告は、原告の商標権および意匠権を侵害する訴訟請求を行わないよう被告に要求しました。裁判所は 被告が生産した商品の外装パッケージと被告の登録した意匠は酷似しており、またこの意匠に使用した標識は原告の 商標と似通っており、その使用を禁止しない場合原告の合法的権利を損なうとして、被告に対し判決の効力発生日から の当該意匠の実施を禁止しました。2021 年 2 月 20 日、山東省高級人民法院は審理の上、第二審においても第一審の 判決を維持しました。
コメント:
特許権の付与及び権利確定プロセスは独自の体系を持ち、また独立して運行されているものです。有効な特許権は 其々民法における関係の中で十分尊重され、特許の不備や有効性に対する疑惑は特許無効の行政プロセスに提出・処 理されます。民事権利侵害事件の審理において裁判所は通常、有効な特許権に対する制限を加えることはありません。 被告が他人の商標、装丁などの合法的権利を侵害する外観関係の特許を利用し権利侵害行為を行うとき、往々にして その特許権が有効であり、更に民事訴訟プロセスにおいては特許権に対する否定・制限が不可能であることを理由とし て抗弁を行ったり、特許権の有効性を笠に着た権利侵害を行うのはまさに特許権のこの特性があだとなっているもので す。
本件において裁判所は行政プロセスにおける「当然優先」や「必然的な前提」といった伝統的思考を覆し、 優先権保有者は被告が商標権もしくは意匠権の取得及び行使登録を以てその合法的優先権に損害を与えた(商標権 の登録を除く)とき、直接裁判所にて民事訴訟を提起し、審査を経て被告の権利侵害が立証された場合、原告の主張状 況と案件の具体的状況に鑑み、被告に対し訴訟対象の商標登録や意匠実施の停止の裁定・命令を行うことを可能とし ました。 (出典:青岛市市南区人民法院 Wechat 公式アカウント)
キーワード:、行政・民事交錯案件、民事行政による最終裁定
概要:
厦門吉信徳公司は特許番号201120130920.7、特許名称を「ペットの活動スペースが拡張可能な折り畳み式ペット用キ ャリーバッグ」とする実用新案の特許権者であり、この権利侵害を行ったとして上海悦舜公司、新憬公司らの会社を告訴 しました。
新憬公司は第一審で上記特許に対し無効審判の請求を行いましたが結果は上記特許の有効性を維持したため、権利 侵害が成立し、新憬公司に対し相応の賠償を命じる判決が下されました。この後新憬公司は再び無効審判の請求を行 いました。
悦舜公司は第一審の判決を不服とし、実施しているのは従来技術だと主張して上訴しました。
第二審では、国家知識産権局は上記特許権は全て無効とする宣告を行いました(無効審判請求第 42072 号)。二審中 新憬公司らは無効の抗弁にて従来技術を主張する証拠として「ペット用キャリーバッグ」、「自転車用バッグ」の技術的解 決手段を引用し、またこれらと無効化手続を併せて行い、これが上記特許は進歩性を備えないものであるとの結論に繋 がりました。吉信徳公司はこの無効審決を不服とし、この無効審決が有効性を持たないとする行政訴訟を提起しました。
最高人民法院は第 42072 号の判決は上記特許権を全て無効にするものの、この決定はなお行政訴訟プロセスの過程 にあることから効力を持たず、よって上記特許権はいまだ有効な特許であり、故に本案件は継続して審理可能と見做し ました。続いて上記で起訴された技術的解決手段が従来技術であるか否かを論述した際、第 42072 号の判決中引用し た 2 件の文書を従来技術とする理由を分析し、結果従来技術だとする抗弁は成立せず、上記で起訴された権利侵害技 術的解決手段が従来技術であると認定はできないとしました。
最高人民法院はまたこれに基づき上訴を却下し、第一審の判決を最終判決として維持しました。
コメント:
このケースは特許権が無効となった状況下で、最高人民法院が依然として権利者の権利保護主張を支持した初めて の民事判決となりました。
最高人民法院知識産権法庭の「民事行政による最終裁定」という性質に基づき、無効審判を受けた特許権について、 裁判所は民事権利侵害訴訟の審理過程でその無効決定について予断することができます。この無効決定に明らかな誤 りがない場合、法院はその案件の具体的な状況を鑑み引き続き権利侵害案件の審理を行い、権利侵害の適時制止と 特許権者の権益保護に努めます。
本案件中最高人民法院は民事判決書中の特許権の効力や無効決定という結論に直接論評することはせず、しかし無 効決定中に進歩性への評価に用いられた証拠については従来技術としての抗弁は成立しないとの評述を行う形で直ち に判決を下し、権利者の権利保護への求めに積極的に応じました。
出典:(网易)