――(2022)最高法知民終788号
裁判要旨
既知化学製品の使用にかかる特許について、当業者が出願日前に既に確定できた当該化学製品の技術的効果を、異なる角度から記述するか、異なる方法で検証するだけであれば、当該既知化学製品の使用にかかる特許は、従来技術との区別技術的特徴とならない。
キーワード
行政 特許出願の拒絶査定 新規性 既知化学製品の使用 技術的効果
事件の経緯
徐某軍は、登録番号が201611021737.7であり、名称が「残留農薬半減期及び/又は完全分解時間を短縮するための残渣低減方法」の特許出願の出願人である。国家知識財産権局は、2018年11月8日に、審査部門の審査を経て、本願を拒絶することを決定した。徐某軍は、拒絶査定に不服し、国家知識財産権局に復審を提出した。これに対して国家知識財産権局は、2020年7月27日に、本願請求項1~3が引用文献1に対し新規性を備えていなく、請求項4~10が進歩性を備えていないので、国家知識財産権局による拒絶査定を維持する第221525号の復審請求審査決定を下した。徐某軍は、復審請求審査決定に不服し訴訟を提起し、被訴決定を取り消し、国家知識産権権局により改めて審査することを求めた。一審法院は、徐某軍の訴訟請求を棄却する判決を下した。徐某軍は上訴し、最高人民法院は上訴を棄却し、原判決を維持する判決を下した。
裁判意見
法院発効判決は、以下のとおりである。既知化学製品の使用にかかる特許について、既知の製品は、その新規使用の新規性に影響を与えない。このような使用について、その本質は製品そのものではなく、それをどのように使用することにあるので、使用方法の発明に属する。保護を求めるいわゆる既知製品の新規使用は、出願日前に明確に開示されていないが当業者が確定できた当該化学製品の技術的効果を記述しているだけであり、または出願日前に確定できた技術的効果を異なる角度から記述したり、異なる検証方法で検証したりしているだけであれば、それは特許にならず、従来技術に対して新規性を備えていない。本件について、本願明細書には、本願が農産物における農薬残留物を効果的に低減、除去することを目的としていることが明記されており、これは引用文献1の使用と相違していない。本願に記載されている「作物内残留農薬半減期及び/又は完全分解時間」を、引用文献1に開示された投与後14日間の農作物における残留量と比較して見ると、両者が正相関関係となり、異なる角度から異なる方法とパラメータで同じ製品の残留農薬除去の効果への検証にすぎない。製品組成が全く同じである場合、本願で作物内の残留農薬半減期及び/又は完全分解時間が検証されたとしても、新たな使用とならない。また、引用文献1の表1における番号1.12の投与方式が比較例であるが、本願の農薬半減期及び/又は完全分解時間で表された農薬残留低減の技術的効果は、比較例の農薬残留低減の技術的効果に対して改善されたことを意味するものではない。また、混合物の成分、比例、使用、効果が開示された場合、その効力増強助剤が果たす具体的な役割を発見したり、検証したりすることも、新たな使用とならず、新規性の判断に影響を与えない。したがって、本願請求項1の技術的方案は新規性を備えていない。
ソース:最高人民法院知識産権法廷
https://ipc.court.gov.cn/zh-cn/news/view-3346.html