--(2020)最高法知民終1889号
判決要旨
主張する技術秘密が技術方案である場合、それは、1つの技術文献に記載されている完全な技術方案であってもよいし、図面、工程プロセス、品質基準、操作マニュアル、実験データなどの複数の異なる技術資料に記載されている公知でない技術情報に基づいて合理的にまとめ、抽出した技術方案であってもよい。
キーワード
技術秘密、記載キャリア、技術方案
案件の説明
上訴人であるの程氏、成都愛興生物科技有限公司(以下、愛興公司と略称する)と被上訴人である科美博陽診断技術(上海)有限公司(以下、博陽公司と略称する)の技術秘密侵害紛争案件において、博陽公司は、臨床免疫診断分野に使用される「Light Initiated Chemiluminescent Assayの汎用液」に関する技術情報が公知でない技術秘密であり、程氏がそもそも博陽公司の技術開発者であり、上記の技術秘密をうまく把握し、離職後、愛興公司に入社し、把握した上記の技術秘密を勝手に愛興公司に渡し、愛興公司が生産、販売した体外診断キットに直接その技術秘密を使用したため、上海知的財産権法院(以下、第一審法院)に訴訟を提起した。
第一審法院は、博陽公司が主張する技術情報が公衆に知られておらず、商業的価値があり、かつ当該技術情報に対して合理的な秘密保護措置を講じ、技術秘密となったので、程氏、愛興公司が技術秘密を侵害する行為を実施したため、侵害を停止し、損失100万元、権利保護のための合理的な支出30万元を共同で賠償すると判決した。
程氏、愛興公司は、判決に不服して最高人民法院に上訴し、博陽公司の工程プロセスなどの資料がその主張する技術秘密方案の個別要素のみを反映し、完全な技術方案を記載していないと主張し、係争技術秘密の完全な技術方案が提出された工程プロセスなどの資料に記載しておらず、係争技術秘密が博陽公司自分で研究開発したものであると証明できないと主張した。
最高人民法院は2022年12月14日に上訴棄却の判決を下し、原判決を維持した。
判決意見
最高人民法院は、第二審により次のように認定した。技術秘密は、通常、図面、工程プロセス、品質基準、操作マニュアル、実験データで表され、権利者が技術秘密の存在とその内容を証明するために、通常、上記の技術秘密を表す資料から、保護する技術情報をまとめ、抽出し、技術秘密が技術方案であってもよいし、技術方案を構成する一部の技術情報であってもよい。
権利者が、これらの技術資料から秘密情報をまとめ、抽出する際に、秘密情報を既存技術及び公知常識と結合して完全な技術方案を形成して保護を請求することが認められる。権利者が公衆に知られていない工程プロセス、品質基準などの技術資料から合理的に抽出した技術方案は、社会公衆に一般に知られ、容易に入手できなければ、技術秘密として保護することができる。
本件において、博陽公司が主張する技術秘密は、8つの技術方案を含み、各技術方案にはいくつかの技術情報が含まれ、各技術方案は、その前の技術方案に対する更なる限定となる。係争技術秘密の粒子のCV値、粒径などの技術情報は、博陽公司の技術資料に対応して記載されている。
博陽公司が、これらの技術資料に基づいて、当分野の既存技術、公知常識に合わせて合理的にまとめ、抽出することは、博陽公司が実際に上記の技術方案を把握していることを証明でき、程氏、愛興公司の、係争技術秘密の情報が記載されいる記載キャリアがなく、博陽公司が係争技術秘密の権利者であることを証明できない主張は成立しない。
ソース:最高人民法院知識産権法廷
https://ipc.court.gov.cn/zh-cn/news/view-2493.html