-(2021)最高法知行終 440 号
裁判要旨
専利授権手続において、出願人が専利請求の範囲を修正する際に追加した内容は、原専利出願書類に明確に 記載されていないが、原専利出願書類に暗黙的に開示されている場合、その修正は専利法第 33 条の規定に違 反せず、許容されなければならない。
キーワード
専利出願、拒絶査定不服審判、暗黙的開示、新規事項追加
事件の紹介
上訴人の国家知的財産権局と被上訴人の成都植源機械科学技術有限公司(以下は植源公司と略称する)の特 許出願拒絶査定不服審判行政紛争事件は、出願番号が 201611044305.8 であり、名称が「高圧自己緊締式フラ ンジ」である特許出願(以下は本出願と略称する)に関する。国家知的財産権局の原審査部門は審査を経 て、本出願の請求項 1〜6 は進歩性を備えていないと判断し、植源公司の出願を拒絶査定した。植源公司は復 審手続において請求項 1 を修正し、「 β < α 」等の内容を追加した。国家知的財産権局は、「 β < α 」 の追加は、原明細書と請求項の記載の範囲を超えており、特許法第 33 条の規定に適合しないため、拒絶査定 を維持した。植源公司は、当該修正は原明細書と特許請求の範囲の記載の範囲を超えていないとして、北京 知的財産法院(以下、一審法院)に訴訟を提起した。
一審法院は、植源公司の修正内容は原明細書と専利請求の範囲に記載された内容から直接的に、疑いなく確 定でき、当該修正は専利法第 33 条の規定に適合し、被訴決定を取り消し、国家知識産権局にあらためて決定 を下すよう判決した。国家知的財産権局は不服として、最高人民法院に上訴した。最高人民法院は 2022 年 7 月 13 日に控訴を棄却し、原判決を維持すると判決した。
裁判意見
最高人民法院第二審は次のように認めた。専利法第 33 条は、出願人がその専利出願書類を修正することがで きると規定しているが、特許及び実用新案専利出願書類の修正は原明細書及び専利請求の範囲の記載範囲を 超えてはならない。「原明細書及び専利請求の範囲の記載範囲」については、当業者の立場から、原明細書及 び専利請求の範囲に開示されている技術内容を確定しなければならない。原明細書及び専利請求の範囲の記 載範囲には、第一に、原明細書、その図面及び専利請求の範囲が文字又は図形等で明確に表現されている内容、 第二に、当業者が原明細書、その図面及び専利請求の範囲を統合することによって直接、明確に導き出すこと ができる内容が含まれる。出願人が専利請求の範囲に追加した内容が、原専利出願書類に明確に記載されてい ないが、その追加された内容が原専利出願書類に暗黙的に開示されている場合、当業者が原専利出願書類を読 み、発明の目的を合わせて直接的かつ明確に導き出すことができる内容であれば、当該修正は許用されるべき である。本出願では、高圧自己圧縮フランジを保護しようとしている。原明細書及び専利請求の範囲にβとα の関係が明確に記載されていないが、β>αおよびβ=αの場合、いずれも本出願明細書に記載された圧力が 高くなるほど、自己締結シール性能が良くなるという技術効果を達成することができない。よって、β<αの 関係が原専利出願書類に記載されていないが、当業者は、原明細書及び専利請求の範囲から直接、明確に導出 することができ、β<αの場合にのみ、本出願明細書に記載の技術効果を実現し、本出願の発明目的を実現す ることができ、β<αの関係はすでに原専利出願書類に暗黙的に公開されている。
また、特許及び実用新案出願書類の修正要求は、修正後の内容が原明細書及び専利請求の範囲に記載された範 囲を超えてはならないことである。実施例は、特許又は実用新案の好ましい具体的な実施形態の例である。上 記の要件を満たせば、出願人は、専利審査及び復審の過程で専利請求の範囲を修正する際に、その保護を求め る技術案をある具体的な実施例に限定することができ、この実施形態に基づいて、請求項を再び合理的に概括 することもできる。
以上より、植源公司の本出願に対する修正は原明細書及び専利請求の範囲の記載範囲を超えておらず、専利法 第 33 条の規定に適合する。
ソース:IPRdaily
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