組合せ使用製品が特許権保護範囲に入った場合の権利侵害責任者認定

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[ 2024-08-16 ]

――(2021)最高法知民終2270

裁判要旨

同一主体が製造した互いに異なる製品を組み合わせて使用でき、組み合わせて使用する場合のみ特許権の保護範囲に属する場合、使用時に実際に形成された技術案に基づいて、当該技術案の形成が消費者か製造者かによって決定されかを重点的に考慮して権利侵害責任者を確定しなければならない。関連製品をそれぞれ使用できるが、消費者が自分のニーズに応じてそれらを組み合わせて使用する場合、一般的にその組み合わせ後の製品の技術案は消費者が決定するもと認定することができ、製造者を権利侵害責任者と認定してはならない。関連製品が単独で使用できず、必ず相互配合してしなければならず、消費者が製品の特定構造、機能、使用説明などに従ってそれらを組み合わせて使用する場合、一般的にはその組み合わせ後の製品の技術案は製造者によって決定されると認めることができ、その製造者を権利侵害責任者として認定することができる。

キーワード

民事 特許権侵害 同一主体の製造 組合せ使用製品 権利侵害責任者

事件の経緯

北京仁某医薬科学技術有限公司は訴訟を提起した、湖南慈某医療科学技術有限公司が許可を得ずに製造、販売した外耳矯正器と骨科位置決め部材の組み合わせ製品は、特許番号が200880108740.Xであり、名称が「奇形耳の矯正」である発明特許の請求項に記載されたすべての技術的特徴を有し、係争特許権の保護範囲に属し、杭州欣某貿易有限公司、寧波四某大薬局有限責任公司は被訴訟侵害製品の販売行為を実施し、寧波市某病院は被訴訟侵害製品を使用する行為を実施したと主張した。従って、四被告に対して事件に関わる特許権侵害行為を直ちに停止し、湖南慈某医療科技有限公司と杭州欣某貿易有限公司がそれぞれ経済損失100万元、寧波四某大薬局有限責任公司が経済損失20万元、寧波市某病院が経済損失40万元を賠償し、寧波四某大薬局公司が賠償に対して連帯責任を負わなければならず、四被告は共同で権利侵害を制止するために合理的な支出58765元を賠償するよう判決を下すことを請求した。

湖南慈某医療科学技術有限公司、杭州欣某貿易有限公司、寧波四某大薬局有限責任公司、寧波市某病院は、権利侵害を訴えられた骨科用位置決め部材と外耳矯正器系の2つの相互に独立の製品であり、両者はセットで販売されているわけではなく、必ず固定的に組み合わせて使用しなければならないわけでもないので、両者を組み合わせて権利侵害の比較を行うべきではないと弁明した。

一審法院の経審理を経て:係争専利請求項1記載:ヒトの耳用の成型デバイスであって、 前記耳が開口部を通り抜けるのに適応するように寸法設定された前記開口部を画定するベース部品であって、前記耳が、対耳輪、三角窩の上肢、耳輪、耳輪縁、基部、耳甲介、および舟状窩領域を含んでおり、前記ベース部品が後面と前面とを含む、ベース部品と、 前記ベース部品に取り外し自在に係合可能で、それらの間にコンパートメントを画定する、上部品と、 前記前面上に配置された、前記対耳輪および前記三角窩の前記上肢の領域で前記耳の望ましい解剖学的形状を維持するように適合された第1のステントとを含む、成型デバイス。

被疑侵害外耳矯正器及び骨科用位置決め部材はいずれも湖南慈某医療科学技術有限公司により生産され、外耳矯正器は医療器械登録証番号が湘機械注準20182190XXXであり、骨科用位置決め部材は製品登録番号が湘長機械備20190XXX号であり、骨科用位置決め部材はI型、II型、III型を含む。前述被疑侵害外耳矯正器、骨科用位置決め部材のいずれも異なる製品としてそれぞれ個別に包装、販売され、販売者はそれぞれ領収書を発行し、両者の販売数量も完全に対応していない。また、係争特許明細書の具体的な実施形態は、後クリップ(係争特許請求項1における第1クリップに対応する)を患児病の状況に応じて単独で使用するか、または他の外耳矯正装置と組み合わせて奇形耳の矯正と治療に使用することを選択すべきであることが公開されている。北京仁某医薬科技有限公司は、外耳矯正器と骨科用位置決め部材(I型、II型を含む)を組み合わせて技術比較を行うべきであると主張した。

一審法院は北京仁某医薬科学技術有限公司のすべての訴訟請求を棄却する判決を下した。北京仁某医薬科学技術有限公司は、被訴侵害外耳矯正器と骨科位置決め部材の組み合わせが係争特許権の保護範囲に属することを理由として上訴した。

最高人民法院は以下の判決を下した。即ち、1.一審判決を取り消す。2.湖南慈某医療科学技術有限公司は直ちにII型骨科位置決め部材の製造、販売を停止し、II型骨科位置決め部材の専用生産金型を廃棄する。3.湖南慈某医療科学技術有限公司は本判決の発効日から10日以内に北京仁某医薬科学技術有限公司の経済損失25万元及び権利侵害の発生を制止するための合理的な支出5万元、合計30万元を賠償する。4.北京仁某医薬科学技術有限公司の他の訴訟請求を棄却する。

裁判意見

法院発効判決は、以下のように認めた。

まず、北京仁某医薬科学技術有限公司が公証方式で収集した被疑侵害の骨科位置決め部材にはI型骨科位置決め部材のほか、II型骨科位置決め部材が含まれ、その中左耳II型、右耳II型骨科位置決め部材の一端にはそれぞれ「L」または「R」が表示されており、その両端には係止固定のための取付脚が付いている。次に、乳幼児の耳の奇形形態が互いに異なるため、矯正に必要な部品や手段も異なり、係争特許明細書に記載された「状況に応じて後方クリップ(係争特許請求項1における第1クリップに該当し、被訴侵害製品である骨科位置決め部材に相当する)を選択して奇形耳の矯正及び治療を行うことができる」との内容を結合すればわかるように、I型骨科位置決め部材は単独で使用することが可能であり、消費者はI型骨科位置決め部材を購入して単独で使用すれば正常に機能することができるし、消費者は自分の消費ニーズに応じてI型骨科位置決め部材と外耳矯正器を組み合わせて使用することもでき、組み合わせて使用するかどうかは消費者自身に決められることである。I型骨科位置決め部材と外耳矯正器との間には取り付け又は組み立て関係が存在しなく、両者とも単独ロット番号が付けられ、単独に包装されて販売され、患者の耳部奇形の状況によって独立に使用することが可能であるため、I型骨科位置決め部材と外耳矯正器の組み合わせを係争特許権侵害製品と見なしてはならない。

しかし、II型骨科位置決め部材の両端には外耳矯正器と係合固定された取付脚が設置され、これは生産コストを高めるだけでなく、消費者がII型骨科位置決め部材を単独で使用するのに技術的障害を招くが、単独で使用する場合、この取付脚が乳幼児の耳を圧迫して矯正効果に深刻な影響を及ぼす。したがって、消費者は一般的にII型骨科位置決め部材を単独で購入して使用せず、消費者はII型骨科位置決め部材を購入する場合、購入した外耳矯正器と組み合わせて使用することを目的とする。

これからII型骨科位置決め部材と外耳矯正器を組み合わせて使用するかどうかは、消費者自身が決定することができるのではなく、II型骨科位置決め部材の特定の構造によって決定されるということが分かる。従って、組み合わせ後の技術案は実はII型骨科位置決め部材と外耳矯正器の製造者によって決定され、II型骨科位置決め部材と外耳矯正器の組み合わせを本件の被疑侵害製品とすべきである。単独の外耳矯正器では、係争特許請求項1における「第1クリップ」の技術的特徴が欠如しており、II型骨科位置決め部材と外耳矯正器の組み合わせは、係争専利にの関連請求項に記載されたすべての技術的特徴を備えており、係争専利権の保護範囲に属する。

ソース:最高人民法院知識産権法廷

https://ipc.court.gov.cn/zh-cn/news/view-3318.html