専利法第二十三条第三項による適法な先行権利の認定

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[ 2025-05-06 ]

――(2023)最高法知行終42

裁判要旨

意匠権の授権・権利確認をめぐる行政紛争事件において、本専利の出願日前に既に取得され、専利無効宣告請求の提出の際にも合法的に存続している権利または利益は、いずれも専利法第二十三条第三項に規定する適法な先行権利を構成することができる。

キーワード

行政 意匠権無効 適法な先行権利

事件の経緯

馬某軍は、名称が「ビール缶」(専利番号が201830256268.0)の意匠権の専利権者である。出願日は2018528日、授権公告日は20181218日である。当該意匠の缶体には「V8」の文字が強調表示されていた。某ビール工貿有限公司は第22475245号「V8」登録商標の権利者であり、商標の出願日は20161230日である。初歩査定公告日は2018727日であり、登録日は20181028日である。某ビール工貿有限公司は、本意匠が専利法第二十三条第三項の規定に合致しないことを理由として、国家知識産権局に本意匠権の無効宣告を請求した。国家知識産権局は2020113日に第46751号無効宣告請求審査決定を下し、本意匠権の有効を維持した。某ビール工貿有限公司は不服として北京知識産権法院に訴訟を提起した。

一審法院は、某ビール工貿有限公司による「V8」登録商標の専用権取得が、商標の登録日以降であり、本意匠の出願日より遅いため、本意匠の出願日前に取得した登録商標の専用権とはならず、本意匠による先行権利との衝突に該当しないを理由として、某ビール工貿有限公司の請求を棄却する旨の第一審の行政判決を下した。某ビール工貿有限公司は不服として上訴した。最高人民法院は、2023922日に以下のように(2023)最高法知行終42号の行政判決を下した。一、第一審の行政判決を取り消す。二、国家知識産権局による第46751号無効宣告請求審査決定を取り消す。三、国家知識産権局が某ビール工貿有限公司の専利番号が201830256268.0で、名称が「ビール缶」の意匠に対する無効宣告請求について改めて審査決定を下す。

裁判意見

法院の発効判決は以下のとおりである。専利法第二十三条第三項が「専利権を付与する意匠は、他者が出願日以前に取得した合法的権利と衝突してはならない」と規定される立法目的は、意匠の実施による他人の適法な先行権利との衝突を回避することにある。当該意匠の実施により他人の先行権利が侵害されかねないいかなる場合が本項に規定の規制範囲に属する。したがって、意匠権授権・権利確認をめぐる行政紛争事件の審理において、専利法第二十三条第三項に規定する「合法的な権利」について狭義に解釈すべきではない。一般的には、法により享有され、本専利出願日前に取得済みで且つ無効宣告請求の提出の際に有効な権利または利益は、全て専利法第二十三条第三項に包含されるべきである。商標権は専利法第二十三条が指す適法な先行権利の一つである。商標は登録商標と未登録商標に区分できる。商標権者は、その登録商標に対して法により専用権を享有するとともに、使用することで既に対応関係が確立され、実際に商品または役務の出所を区別する機能を果たしている未登録商標に対しても合法的な権益を享有する。

本件において、某ビール工貿有限公司が主張する先行権利にはV8標識の先使用による権益が含まれる。某ビール工貿有限公司の前身である大理公司は、本意匠の出願日前に、既に12年にわたりビール製品に「大理ビールV8」や「大理V8」標識を使用、宣伝し、高い知名度と影響力を有する。消費者は既に、「大理ビールV8」や「大理V8」を大理公司の「V8」ビールとして認識しているため、「V8」標識と大理公司との間に一定の特定関係が形成されていた。加えて、馬某の居住地が当該ビールの主要販売地域に位置するため、客観的に先出願商標標識の模倣、複製の可能性がある。よって、本意匠は専利法第二十三条第三項に合致しないと認定し、原判決を取り消し、改めて決定を下すように判定した。

ソース:最高人民法院知識産権法廷

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