意匠に明らかな相違点があるかどうかの認定

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[ 2025-05-06 ]

——2022)最高法知行終567

裁判要旨

専利意匠が、同種類の製品における同一の対比意匠中の異なる部分の意匠特徴のみを、中央に配置したり、対称にしたりするなどの慣用の設計手法で組み合わせまたは置換を行うものであるならば、通常、当該専利意匠は、対比意匠とわずかな相違点を有することに過ぎず、一般的に独特の視覚効果を有しないと考えられる。

キーワード

行政 意匠権無効 明らかな相違点 慣用の設計手法 組み合わせ 置換

事件の経緯

黄某毅は、専利番号が201830119037.5で、名称が「ドライバ収納ケース」の意匠権者である。佛山市南海区万某五金工具廠は、国家知識産権局に無効宣告請求を提出したとともに、公告番号がCN304304652Sの中国意匠文献を証拠1として提出した。佛山市南海区万某五金工具廠は、本意匠が証拠1などの組み合わせと比べて明らかな相違点を有しないと主張した。

国家知識産権局は、審査の結果、本意匠と証拠1との主な相違点として以下のように指摘した。1.ハンドル収納腔の位置が異なる。本意匠に係るハンドル収納腔は、矩形ケースの中央に位置するが、証拠1に係るハンドル収納腔は、矩形ケースの左側に位置する。2.ビット収納腔の形状および位置が異なる。本意匠において、2つのビット収納腔は、ハンドル収納腔の両側に対称的に配置され、各ビット収納腔は、上から下へ均等に配列された4組のビットスロット部を備え、各ビットスロット部は、3つのスロットを有する。これに対し、証拠1において、1つのビット収納腔は、ハンドル収納腔に隣接するように矩形ケースの右側に位置し、上から下へ均等に配列された4組のビットスロット部を備え、各ビットスロット部は、6つのスロットを有する。本意匠と証拠1とは、ハンドル収納腔の位置の違いや、ビット収納腔の形状及び位置の違いにより、対応する部分の分割形状および全体のデザインに顕著な相違が生じた。この正面のデザインは、一般消費者の注意を引く部分であるため、本意匠と証拠1との上記相違点は、全体の視覚効果に顕著な影響を及ぼし、両者は明らかに相違する。また、上記相違が当該製品の慣用の設計手法に属することを証明する証拠はない。なお、本意匠は、証拠1、証拠2(または証拠3)と慣用の設計手法の組み合わせ、並びに証拠4、証拠2(または証拠3)と慣用の設計手法の組み合わせに対して、明らかな相違点を有する。2020113日、国家知識産権局は、第46788号無効宣告請求の審査決定を下し、本意匠権の有効を維持した。佛山市南海区万某五金工具廠は不服として、原判決の取消し、国家知識産権局による再審査を求めるように北京知識産権法院に訴訟を提起した。

一審法院は、審理により、本意匠が証拠1と慣用の設計手法の組み合わせに比べて明らかな相違点を有すると判断し、2022322日に(2021)京73行初5238号行政判決を下し、佛山市南海区万某五金工具廠の上訴を棄却した。佛山市南海区万某五金工具廠が訴訟を提起し、最高人民法院は2023118日に以下のように(2022)最高法知行終567号行政判決を下した。一、一審法院の行政判決を取消す。二、国家知識産権局による第46788号無効宣告請求の審査決定を取消す。三、国家知識産権局は、佛山市南海区万某五金工具廠が専利番号が201830119037.5で、名称が「ドライバ収納ケース」の意匠に対して提出した無効宣告請求について、改めて審査決定を下す。

裁判意見

法院の発効判決は以下のとおりである。本意匠は、証拠1と慣用の設計手法の組み合わせに比べて明らかな相違点を有しない。長手状ハンドル収納腔およびビット収納腔の形状、大きさ、数は、主に収容されるハンドルやビットの形状、大きさ、数によって決められ、ハンドル収納腔およびビット収納腔は、ハンドルやビットの形状、大きさ、数から独立して設計することはできない。ハンドルとビットを収納するためのスロット構造は、ドライバ収納ケースの基本的な設計特徴である。証拠1によってハンドルとビットを収納するためのスロット構造の設計が開示されている場合に、一般消費者は、証拠1による全体的な設計上の示唆点に基づいて、中央に配置したり、対称にしたりするなどの慣用の設計手法で、ハンドル収納腔全体を中央に移動させ、ビット収納腔をビットスロットの形状、大きさおよび数に応じて左から右、上から下に均等に配列させ、ハンドル収納腔の両側に対称的に配置することを容易に想到することができる。したがって、証拠1に基づき、慣用の設計手法を適用することで、すなわち、同じ種類の製品に適用された証拠1の異なる部分の設計特徴を結合したり置き換えたりすることで、本意匠の全体的な視覚効果とわずかな相違点を有することに過ぎない、実質的に同一の意匠を得ることができ、かつ独特の視覚効果を有しないため、本意匠は証拠1と慣用の設計の組み合わせに比べて明らかな相違点を有しないと認定した。

ソース:最高人民法院知識産権法廷

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